ストレスは学習能力を下げる!犬に新しいことを教える前にまずやるべきこと




犬のストレス

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わたしは基本的に、犬たちには一般的に「トレーニング」と言われるようなオビディエンスのようなことは一切やりません。

でも、呼び戻しだったり、散歩中に引っ張らないでリードの範囲内で歩くことだったり、車道に飛び出さないことだったり、
食べ物ではないものを拾い食いしないことだったり、一緒に暮らしていく上で最低限必要で、なおかつ犬の安全を守るうえで必要なことは教えて、覚えてもらっています。

 

瀧沢かいるー
瀧沢かいるー

そこで、飼い主さんたちにもやり方を教えて、呼び戻しやお散歩の練習をしてもらっています。

 

でも、散歩に行くと大興奮でリードを引っ張りまくって、呼んでも来ないしおやつにも反応しないし、どうすればいいんでしょう、という相談を受けることが多いんです。

飼い主さんは一生懸命、呼び戻しの練習や、お散歩の練習をしようとしてくれているんだけど、犬はそれどころではなく聞く耳を持ってないっていう状態です。

 

こういうケースは相談を受けているとけっこう多くて、犬がトレーニングできるような状態じゃないってことを示しています。

犬はすでにオーバーストレス状態で、そんな時に新しいことをさせようとするとさらにストレスの上塗りになっちゃうんですよね。

わたしは呼び戻しやお散歩練習のやり方を教えると同時に、必ず「ストレスマネジメントをやって下さい!」ってお願いしています。
でも、どうも多くの飼い主さんは呼び戻しやお散歩練習のほうにばっかり気を取られて、ストレスマネジメントを忘れがちなんですよね。

 

 

瀧沢かいるー
瀧沢かいるー

犬に新しくなにかを教える前には、ストレスマネジメントが必要です。
犬が新しくなにかを学習できる状態じゃないといけないんですよ。

 

 

ストレスは学習をさまたげる

高ストレス状態では学習能力が上がらないということは、さまざまな実験によって明らかになってきています。

ヒトの脳についての研究では、ラットや猫、サルなどの哺乳動物が使われるので、犬について知りたい場合にもとても参考になります。

海馬は脳の中央にある原始的な脳である大脳辺縁系の一部で、記憶や学習に関連している部分です。
ストレスはこの部分を損なうので、海馬にも影響が出てくるということです。

 

ストレスは学習能力を上げる?

でもわたしが学生のころ、多少のストレスは学習効率を上げるから犬がストレスサインを出していても、トレーニングをつづけたほうがいいという話を講師から聞きました。
今でも一部のトレーナーの間ではこの話が信じられているようです。

でも、ストレスの生理に対する作用についての研究で、動物を繰り返し極端なストレスにさらすというなんとも非人道的な実験の結果、
「学習性無気力」という、ブログでも何度か取り上げた行動が生じて、脳内ノルアドレナリンの枯渇などの変化が観察されているんです。

行動上の変化としては以下のようなものがあります。

 

  • 体重減少
  • 食欲減少
  • 能動的行動の減少
  • 競争性や通常の攻撃性の現象
  • 記憶や注意力の欠落
  • 睡眠かく乱
  • 排便増加

 

ストレスがかかると、ノルアドレナリンシステムが急速に活性化します。

サルにゲームをさせる実験によると、脳内ノルアドレナリンが増大するとサルは集中力が高まってゲームの成績がよくなりましたが、
ある点を超えるとゲームの成績が一気に悪くなることがわかりました。

これはつまり、低レベルのノルアドレナリンは脳の効率を増大させるけど、レベルが極めて高くなると脳は非効率になるってことです。

つまり、オーバーストレス状態になる前にトレーニングをやめないといけないってことです。

 

「多少」とは…?

そもそも、多少のストレスの「多少」ってどれくらいなんでしょうか?

「多少のストレスなら大丈夫」って言いながらトレーニングしているトレーナーたちの様子を見てみると、犬が少しでも反応が遅ければ怒鳴りつけてプレッシャーをかけ、
一度のコマンドで言うことを聞かなければジャークし、コマンドを出す時には常に大声を張り上げています。

 

瀧沢かいるー
瀧沢かいるー

これが「多少」なんですか?

 

人間が同じことをされれば相手をパワハラで訴えるような状態ですよ。

これが毎日長時間つづけばあっという間にオーバーストレスになります。

 

確かにトレーナーのコマンドに対する犬の反応はとてもいいけど、それは従わないとあとで怖いことになるからです。

こういったトレーニングを受け続けた犬は、トレーナーのコマンドには確実に従うようにはなるけど、自分で何かしようと行動を起こす(能動的行動)がなくなってしまいます。

コマンドトレーニングを生活の中に取り入れることは、犬に刺激を与え日々のメリハリをつける「良いストレス」になるといわれています。
確かにコマンドトレーニングは課題をこなすことが適度な緊張感をもたらし、生活にメリハリを与え犬にはいい刺激にはなります。

でもそれはあくまで、犬が楽しんで、遊び感覚でやっている場合に限ったことで、それを毎日、長時間に渡ってつづけたり、コマンドに本格的に従うことを求めるオビディエンストレーニングになり、
飼い主が完全にトレーニングモードになって少しの失敗も許さない!って状態になると、犬は疲れてオーバーストレスになります。

 

どこからどこかまでが犬にいい刺激を与える「多少」のストレスなのかはだれにも正確にはわからないし、犬によっても我慢できるストレスのレベルが違います。
そもそも犬は人間と暮らしている中で十分に我慢してくれているので、そのうえさらなる我慢を強いてはいけません。

犬にストレスを与えるようなことは極力避けて、「多少」でもストレスをかけないようにしてあげた方がいいんです。

 

 

もともとストレス状態の犬は要注意

また、以前ストレスにさらされていたことがある動物は、ストレスに繰り返しさらされていると、そうでない動物よりもノルアドレナリンの放出が多くなるそうです。

ノルアドレナリンの生産が追い付かなくなると学習性無気力が起こります。

 

わたしのもとに相談に来た時には、すでに多くの犬が高ストレス状態になっています。
その状態で呼び戻しやお散歩練習をすることなんてまず無理なので、新しいことを学習できるようになるまでストレスレベルを下げないといけないんです。

だからわたしはいつも、それまで犬にやっていたストレスのもとになる行動をやめてもらい、環境も整え、「何もしない」ことでストレスレベルを下げることを提唱しています。

 

他にも、飼い主に捨てられたり、はぐれたりして保健所や愛護センターにいた経験のある犬は、さらなるストレスがかからないうように気をつけてあげないと、無気力になったりストレス性問題行動を起こしやすいんです。

時々、保護犬を譲渡されてすぐに厳しい訓練を始めたり、チョークチェーンを使ってジャークしながら散歩していたら問題行動が見られるようになったって相談してくる人がいるけど、
そんなことしてりゃ当たり前だろって言いたい。

【何もしないとは?】
「何もしない」犬との関係構築の基本

 

 

ストレスサインに敏感になろう

多くの飼い主さんは愛犬のストレスサインに気づいてなくて、もしくは気づいていてもあまり深刻にとらえないで流してしまってるって人がほとんどです。

相談をくださった飼い主さんに愛犬の様子を動画で見せてもらうと、あ~オーバーストレスだな~って一目でわかるような状態でも、
うちの子にはストレスなんてないって考えてる人が多いんです。
わたしがストレスサインを教えて、動画を見ながら「ほら今サイン出てますよ」って指摘してようやく気付く感じです。

 

気づかないっていうのは、ストレスサインやカーミングシグナルを知らないっていうのも大きな原因の一つです。

知らないから気づけないし、気づけないから気にもしないし、わたしにストレスマネジメントやって下さいって言われても忘れがちになったり、やる必要がないって思ったりして、
愛犬が高ストレス状態なのに呼び戻しやお散歩練習とか新しいことを始めちゃうんです。

ストレスからくる問題行動がある犬に、ストレスマネジメントをしないでいきなりトレーニングを始めてもうまくいきません。

 

犬を飼うのであれば、犬語であるカーミングシグナルやストレスサインについて、愛犬が出すサインについては気づけるていどには勉強しておきましょう。

そして、愛犬が出すそれらのサインにもっと敏感になって下さい。

はじめは軽いストレスでも積もり積もれば深刻な事態を引き起こします。

 

ストレスマネジメントを進めて、快適な環境で落ち着いて規則正しい生活ができてくると、犬の心にも余裕ができて、だんだんと新しいことを学習できる状態になっていきます。
呼び戻しやお散歩練習をするのはそれからで、教えるのはあくまで人間と暮らすうえで必要最低限で、なおかつ犬の安全を守るために必要なことだけです。

 

瀧沢かいるー
瀧沢かいるー

人間の言うことをただ聞かせるだけのオビディエンストレーニングは全く必要ないし、新たなストレスの原因になります。

 

ただでさえなにかとストレスが多い日本の飼い犬たちです。

与えないですむストレスはできるだけ避けて、余計なストレスは取り除き、可能な限り快適な環境を提供してあげて下さいね。

【カーミングシグナルについて詳しくはコチラ】
「カーミングシグナル」飼い主なら知っておきたい『犬の言葉』の正しい知識

 

 

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